「実際に往診に来てくれる先生は、どんな人なのかしら?」
訪問歯科の場合、普通の歯医者さんに行くときより気になるかもしれません。

きらきら歯科池袋の院長先生にインタビューしました。

院長:渡邉義隆(わたなべよしたか)

※訪問歯科の現場取材の後に、インタビューしました。

―訪問歯科診療、本当にお疲れさまでした。

最後の患者さんは、思いのほか時間がかかりました・・・金属の詰め物を取るのはササっとはいかないんですね、スミマセンでした。

―いえいえいえ、腰は痛くないですか?

ええ、でも私たちの仕事は訪問も外来も、腰が痛くなりがちですね。
普通のユニット(診察台)でも、上の奥歯だと腰をかがめて覗き込みますから。

―お願いする家族側からすると、同じ先生が来てくれるのか気になります。

なるべく同じ先生が行くようにしていますし、池袋でもそういう予定です。
歯が痛くなったりなど急ぎの場合等は、他の先生が対応します。

―「急に歯が痛くなった」などの急患まで、訪問歯科で対応可能なんですか?

はい、急患対応もしています。

―急患対応が訪問歯科で出来ることを家族が知っておけば、何かあった時に対応できますね。

訪問歯科の治療後にお痛みが出た場合も「私が来れないかもしれないけど電話くださいね」とお伝えします。

―心強いです!ちなみに先生は、どうして訪問歯科を志したのですか?

20数年前に長崎大学で入学、最初のオリエンテーションで助教と話した時に「これからは歯医者に行く時代じゃなくて、おうちに来てもらう時代になる」という話があったのです。

―予見していましたね!

まさか自分がそうなるとは思わなかったのですが、(患者さんのところへ)行くべきなんだろうなと思っていました。
私はサラリーマンをやっていて、35歳の時に歯科医師なったんです。

―なんでサラリーマンを辞めて歯科医師に?

父が心筋梗塞で倒れたんです。
父は三人兄弟なのですが、その他の兄弟も脳梗塞で倒れました。
その時にお世話になった先生をみて「自分も医療関係に携わりたい」と思いました。
歯医者って、潔い仕事なんですよ、評価がリアルタイムで目の前で起きるんです。
「あなたの作ってくれた入れ歯、とてもいいわ」とか。

―そのキッカケで次のステップを踏み出したところがすごいですね。国立大学だからセンター試験受けて・・・ですよね?

はい、働きながら4年くらい勉強しました。
勉強をしなきゃいけない状況に置かれる事は、大事なことだと思います。
ましてこれからの院長になるので、全て自分に掛かってきます。
高崎は0から作っていくので、しっかりとやっていきたいと思います。
教える仕事もやっているので、若い人とお話しすることが多いんですよ。

―教える仕事ですか?

はい、東洋医療(骨接ぎ、針きゅう、柔道整復師養成等)の専門学校の教員もやっています。
看護や理容師の学校の講師もやったことがあります。
珍しい経歴かもしれません。

―教員をやっているということは、教育のプロフェッショナルですし、東洋医学の先生なら全身を診られますね!

解剖学、生理学も学んだので確かにそうかもしれませんね。
やればやるほど面白いですし、歯科医療に活かせると思います。

―訪問歯科の際に、何か心掛けていることはありますか?

「お宅にお邪魔する」という感覚がとても大事だと思うんです。
例えば玄関に入ったら靴も揃える、コーディネーターさんは荷物を持っているので、自分が最後に揃える。
そういうところで見られちゃうんです、そこを大切にしようって気持ちだけはあります。
それが私のオリジナリティかなと思っています。

あともう一つ、「当たり前のことをやる」ということです。

―当たり前のこと、ですか?

はい、当たり前の事ってなかなか出来ないんですね。
訪問歯科の現場の場合、器具の限界があります。
タービン(歯を削る機械)も回転数が全然違う、ライトもすごく明るいライトではないですし。
でも訪問現場では、皆さん快く協力してくださいます。

また、患者さんも耳が遠かったり・・「○○してください」と言ってもなかなか伝わらなかったりします。
いろいろな意味でなるべく「当たり前」に近づけることが大切だと思います・・・月並みなことかもしれませんが。

―確かに、訪問現場ではユニット(診療台)は上下しないですしね。

でもベッドが上下することもあります。
昔はそんなベッドはありませんでしたよ、進化はしているんです。

―先ほどの訪問先で、歯の根(神経)の治療をする可能性があると話が出ていましたが、訪問歯科で出来るんですか?

やっている方、結構います。
私も現在1名の患者さんの奥の大臼歯の根の治療をしています。
奥歯は本当に難しいです、治療回数も時間も掛かります。
大変な治療なので、刑務所の中の受刑囚は抜歯をしてしまうと聞いたことがあります。

―歯の根っこの治療をしないで、抜歯するのですか?

本当かどうか定かじゃないですけど・・・それくらい時間も手間も掛かるという事です。

―長崎の大学に行かれていたとのことですが、先生のご出身はどこですか?

生まれたのは東京都豊島区です。
昔、前橋の学校に通っていた経験があります。
なので、地元に戻ってきた、という感じがしてちょっと嬉しいですね。

―「歯医者さんに来てもらうのは申し訳ない」と我慢している方が多いと感じますか?

確かに多いです。
年齢層が上がれば上がるほど「もうちょっと早く言っていただければ、抜かないで済んだのにな」ということが多い気がします。
一方、今の若い人は歯医者を怖がらないです。
長崎大学での同期は松坂世代で「インフォームドコンセント(説明を受け納得したうえで治療を進める)」を刷り込まれている世代なんですね。
「歯医者って怖い、痛い」というイメージがあるけど、新しい教育を受けているので(笑)安心して呼んでください。
「虫歯の洪水」といわれた50年前くらいに子供だった方は、痛い治療を我慢したなどの歯医者での嫌な思い出が相まって怖がる方が多いです。
不安や痛みをなるべく取り除くように歯医者は頑張ってます、私もその1人であります。
ですので、お気軽にご相談ください。
先ほどの歯の根の治療は、簡単に終わらないから十分にご説明する事が大切です。

―これから池袋で訪問歯科をするうえで、大切に考えていることはありますか?

家族や患者さんと引き合わせてくれるケアマネージャーさんも、当院のコーディネーターのようにとても大事な存在です。
なのでケアマネージャーさんとのお付き合いも大事だと考えており、自分からも積極的に発信できればなと思っています。
特に、最初はそれが大切で、その間に信頼関係を構築できればと思っています。

―今までの診療で、嬉しかったことはありますか?

「先生でよかったです」と言ってもらえるのは、とても嬉しかった、認めてもらえたと感じました。

また、訪問歯科という特性上、自分が最期の歯科医師になる確率がかなり高いんです。
末期がんの患者さんのご家族から「おじいさんの前歯が黒っぽいのを治してほしい」と依頼がありました。
患者さんの容態がいい時も悪い時もあります。
2回ほど体調が悪くて治療が出来なかったのですが、よかった時にちょっと時間が長く掛かっても治療したんです。
最終的にご家族に「先生にやっていただいて本当に良かった」と言われてホッとしました。
治療を止めたら歯が黒いままだったけど、歯がキレイになって亡くなれてよかったとおっしゃってました。

―そうだったんですね。ちなみに、訪問では感染対策はどうしているのでしょうか?

歯科ってもともと感染対策、衛生管理は「当たり前」だったんですね。
でもさらに、それを徹底しています。

例えば、手に次亜塩素酸水を掛ける、マスクを二重にする、事務所に帰ってきたら手洗いうがいを必ずやってから入る、これらは以前から「当たり前」でした。
治療時も、タービン(歯を削る機械)はもちろん現場で1本ずつ替えますし、大原則ですが治療器具は全て滅菌、ディスポーザブル(使い捨て)出来るものは全て使い捨て、これらも「当たり前」でした。

また、自分がコロナの陽性にならないように十分に注意する・・・会食は避け、休息を十分にとることに注意を払ってます。
なので、安心してください。

―ありがとうございます。最後に患者さんにメッセージをお願いします。

訪問歯科という仕組みがある知ってほしいです。
コロナを機に「歯医者さんがお宅にお伺いすることが出来るんですよ」というのは、認識される契機になりました。
最初の訪問は無料で伺いますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

インタビュー後記

訪問現場での先生は、温かくて優しい感じで溢れていました。
サラリーマンを辞めて歯科医師を志したその気持ちとリンクしていると感じました。
インタビューの際も言葉を選んで、謙虚にお話しされていたのが印象的でした。